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旅とけんちく

第15回 新デザインミュージアムOPEN

大学のメインコースが先日終了しました!
前回のブログでご紹介したオリンピックにまつわる建築プレゼンも無事終わり、(締め切りギリギリに)小論文も提出し…
ホッと一息ついた所です。

 

そんな今回は最近訪ねた新しい美術館についてお伝えしたいと思います♪

11月24日、西ロンドンの高級エリア・ハイストリートケンジントンにデザインミュージアムが移転オープンしました。


*オフィシャルウェブサイトより。屋根が特徴的な建物です。

 

元々は1989年にテレンス・コンラン卿によって東ロンドンに作られたモダンアート専門の美術館。
彼はイギリスの代表的インテリアデザイナーで、世界各地のライフスタイルショップやレストランの経営者でもあります。
日本でも『ザ・コンランショップ』が展開していますね。

 

作品の収蔵スペースが不足していたことから、西ロンドンで長年放置されていた60年代の建物を改修・移転という流れになりました。

 

建築家はイギリス出身・ミニマルなデザインで有名なジョン・ポーソン。
内部空間は極めてシンプルでありながらも独特な屋根形状などの元々の建物を活かした構造になっていました。

 

地下1階、地上3階の低層。

中央に大きな吹き抜けがあり、それを囲むように各フロアが重ねられています。

 

8月のブログでご紹介したテートモダンの旧館などは、デザインはユニークですが上下の移動回路がわかりづらく

アクセスの悪さの例として学校の授業でも取り上げられていました。
その点この美術館は対照的で自分が今どこにいるかが一目瞭然です。

 

そして屋根形状をそのまま表した吹き抜けには天井照明が一切無し!
それでも階段手摺の下や壁の隙間などにしっかり間接照明が計画されていて、
暗さを感じないだけではなくそれらが誘導灯のような役割も担っていました。
てっぺんのスリットからわずかに漏れる自然光も良い雰囲気です。

 

よく見ると細かい部分にもこだわっていますが、建物はあくまで展示物を引き立てるもの。主張しすぎないようにおさえているのが伝わりました。
奇抜なものも多い中こういう建築は何だか新鮮に感じます。熱心に空間を眺めている人が多かったのも印象的でした。

 

さて、こちらでは現在『Beazley Design of the Year』という特別展が開催中。
2016年に誕生した優れたデザインを建築・プロダクト・コマーシャル等あらゆるジャンルから紹介しています。
4月のミラノサローネに行った際訪れたプラダ財団の美術館や、日本からは深澤直人さん監修の無印良品家電も選ばれていました。

さらに無料で見られる展示も常時開催中で、現在は『デザイナーが考えるオープンレジデンス』とのこと。面白そう…。
近々また行って来たいと思っています!

 

…と、慌ただしく過ごすうちにあっという間にクリスマスですね。
こちらでは「クリスマスは家族・友人と過ごすもの」という意識が強く、街はその人達へ沢山のプレゼントを買う人々で大混雑!
私のロンドン滞在も残り少なくなってきましたが、この国で過ごす初めてのクリスマスを楽しみたいと思います。

 

皆様も素敵なクリスマスを、そして良いお年をお迎え下さい♪

クリスマス仕様のコンランショップ.。.:*☆

第14回 オリンピックと建築

こんにちは。もうすぐ師走だなんてびっくりですね…。
現在通っている大学は12月中旬で冬休みに入ります。
私が参加している短期のコースはそこで終了。
ということはつまり…期末に向けた課題が迫ってきています!!

 

そのうちのひとつ、ランドスケープデザインのクラスでは
「自分の出身国とロンドンの街並みや都市計画を比較してプレゼンせよ」
という課題が。
具体的なテーマは何でも良いそうなので、私はオリンピックをテーマにリサーチしている所です。

 

*2012年ロンドン・メインスタジアム

 

東京オリンピックメインスタジアムをめぐっての騒動は記憶に新しいですよね。
ではロンドンではどうだったのか?ということで、東部ストラトフォードにあるクイーンエリザベス・オリンピックパークへ。

 

こちらがメインスタジアム…こうして見ると何だか…地味?

 

地味というかとにかく簡素!
造りはもちろん装飾もあまりなく、全体に「仮設」感が漂っています。

*今年からここを本拠地にしているサッカーチーム・ウェストハムのロゴもちらりと。

 

調べてみたところ、当時の会場作りはまさにその「仮設」を目指していたのです。
運営側の政府・組織委員会にとってオリンピック開催はロンドンの宣伝、プロモーションのための手段に過ぎない。
テレビに映ってほしいのは選手たちの活躍とそのバックに見える美しい街並みであってスタジアムを前面に出す必要はない、というポリシーがあったそうです。

 

設計者はアメリカの『POPULOUS』という会社。
スポーツコンサルティング設計が多く世界中に支社があるようですが、一般的に有名ではないですよね。
ちなみにスタジアムは600億円という低価格で建てられています。
(再決定された新国立競技場の予算は約1500億円)

 

メインスタジアム以外でも、例えば馬術の会場などは鉄パイプに布をかぶせただけというような簡素なものが多かったよう。
その時だけの豪華さにお金を使うのではなくオリンピック後の発展に目を向けプロモーションの方に重点を置いた、良い意味での「割り切り」の結果なんですね。

もう一つ大事なことはメイン会場となったストラトフォードの地域性。
このあたりはロンドンで最も貧しい地域でした。
昔は製造業でもっていたものの、それが傾くにつれて失業率が上がり治安が悪化し…
当時のリビングストン市長は「この地域を再興するには五輪招致しかない」と考えたそうです。
スタジアムと同じく、目標がすごくはっきりしています。

 

現に招致決定後には新たにストラトフォード・インターナショナル駅を開業させ大規模ショッピングモールも誘致。地域の失業者を積極的に雇用しました。
今後5年間でも色々な企業の移転が決まっているそうです。

 

もちろん議論はさまざまありますが、目先のことにとらわれず20年・30年先の
街の姿を見据えてあくまで「手段」としてオリンピックを利用したのはさすがだなぁと感じます。

 

さてさて。このあたりのことを日本と比較しつつ、果たしてプレゼンはうまくいくのでしょうか?!
頑張ります…。

 

 

*余談ですが…こちらは同じ敷地内にあるザハ・ハディド設計の水泳競技場。
オリンピック終了後は改修を経て市民に安価で開放されています。

 

第13回 ザハ・ハディドを偲ぶ〜Roca London Gallery〜

「Sorry!金曜日の時間割がわからなくなっちゃって」

大事なグループ製作とプレゼンに2週連続で来なかった女の子(トルコ人)の言葉です。

「その前までは普通に来てたよね…?」

こちらは声にならなかった私の思いです。

タイトルと関係のない話題からスタートしてしまいすみません。

とにかく同じグループのクラスメイトに悩まされてまして…!

上記の日には男の子(フランス人)も現れませんでした。

理由は「彼女といたもんで…Sorry!」

 

本当に世界には色々な人がいて色々な考え方がありますね。

この環境の中では日本の常識が当たり前ではないと実感します。安らかに過ごすため『人に期待しない』を信条に日々励んでいこうと思います。

 

*ロンドンも秋が深まっています。
日本のような紅葉が見られず寂しいですが…。

 

さて、前置き(愚痴)が長くなりましたが気分を切り替えて

最近行った場所について!

バスルーム商品のショールーム・Roca London Galleryです。


2011年竣工、設計デザインは今は亡きザハ・ハディドです。

外観からすでにザハらしさが見えますが、内部はまさに彼女の個性が前面に出ていて…

 

直線がほとんど見当たりません。

取り扱う商品に合わせて『水』をコンセプトにしているだけあります。

すべてが水の流れのようにゆったりうねり、

宇宙船のようにも感じる空間でした。

というか元々彼女の持ち味はこういうデザインだったので、

Rocaの求めるものにうまくはまったのでしょうね。

 

床のタイルまで水の流れを表現。

施工が難しそうなのに目地がとてもきれいでした。

 

美しいバスルーム商品が空間に余裕を持って置かれています。

 


なんだこのかわいいトイレは!と思ったらキッチンツールで有名な

ALESSI(イタリア)製でした。

 


こちらはミーティングルーム。

ちなみに壁のグリッドラインは期間限定で、

普段はシンプルな白壁のようです。

この日の目的は『BATH』がテーマのトークショーだったのですが、

それに合わせて世界各地の温泉施設やサウナの展示があり。

 

日本からは大分のラムネ温泉が紹介されていました。

トークショーにはイギリス・チェコから3組の建築家が参加し、

それぞれのお風呂にまつわる仕事について紹介&意見交換。

 

特に印象に残ったのがチェコの『公共サウナ』や『ポータブルサウナ』です。

以前行ったフィンランドでも至る所にサウナがありましたが、チェコでも

いわゆる『お風呂』ではなくサウナが人々の交流の場として身近になってきているようでした。

 

翻って自分自身はというと…

ロンドンではシャワーばかり。ゆっくりお風呂に入る機会はなく、

このイベントに参加したことでさらにお風呂や温泉が恋しくなりました…。

夜の外観もなかなかきれいです。

第12回 デザインイベント目白押し!

あっという間に季節は秋ですね。
前回のブログの後ついに学校が始まり、約10年ぶりに大学生になったナキウサギです。
早速課題やプレゼンが続き、さらに授業の一環でベルリン研修も行われ…ぼんやりしている暇もないくらい怒涛の1ヶ月でした。

そして今回のテーマであるデザインイベント!これが私をさらに忙しくさせた一因です。
ロンドンではこの1ヶ月大きなイベントが立て続けに行われており、学校の合間を縫ってそれらを駆け巡ることになりました。
代表的なものを挙げると…ロンドンデザインフェスティバル・デザインビエンナーレ・オープンハウスロンドン・そしてロンドンファッションウィーク!
かいつまんでご紹介したいと思います^^

 

■ロンドンデザインフェスティバル
2003年から始まったこのイベントは年1回開催の大規模なもの。
美術館や博物館はもちろん街中のあらゆる場所が様々なデザイナー、建築家やショップの会場と化します。

*私が通う大学の広場にもこの期間だけの建築が出現。“SMILE”製作中の様子。

 

最終日の25日は東ロンドンにあるLEE BROOMというインテリア/プロダクトデザイナーの展示へ。
小さなスペースなので入場制限がかかり、行列が出来ていました。

今回の展示は“OPTICALITY”(視覚)のタイトルのもと、新作照明OPTICALの発表の場になっていました。ただしとても幻惑的な空間で!

展示されている照明はどれも同じ物ですが、上下左右全ての空間が鏡貼りのため光の球がどこまでも続いていくような錯覚を覚えます。
見学を2人ずつに制限して入場させる希少価値の高め方も上手いなぁと思いました。

 

■オープンハウスロンドン
個人的にとても楽しみにしていたこのイベント。
こちらも年1回のみ・9月中旬の土日に開催されます(今年は9/17-18)。

概要としてはロンドン市内の様々な建物、大小規模問わずがこの2日間だけ一般に公開されるというもの。
イングランド銀行や美術館の舞台裏、果ては個人の邸宅など…
通常はまず内部を見られないような所まで網羅されているのがこのイベントのすごいところ!

 

私が行った所の一部は…

イギリスの建築家ノーマン・フォスターの設計事務所(Foster+Partners)


*オフィスが見学できたり現在進行中のプロジェクトの様子を垣間見たり…

映画『キングスマン』の舞台にもなった集合住宅 Alexandra Road Estate。


ここはいわゆる低所得者層向け住宅ですが、ブルータリズムの雰囲気漂う無骨なコンクリート造がとても好きです。
前々から中を見たいと思っていたところにこのイベント…願いが叶いました(T_T)
見学したのはこぢんまりとした1LDKの間取り、その中に住人の方のこだわりや趣味がしっかり詰まっています。


*住人自ら内部の説明をしてくれて写真撮影も自由。太っ腹というか懐が深いというか。

 

■ロンドンファッションウィーク/ファッションウィークエンド
少し建築とは離れますが… せっかくニューヨーク・ミラノ・パリに並ぶファッション大都市にいるのだから
一度は生で見たかったファッションショーへ!
年に2回・2月と9月に開催され、平日開催のファッションウィークと土日開催のウィークエンドの2つに分かれます。
学校の多忙な時期と重なってしまったため平日はあきらめ、ウィークエンドの方へ行ってまいりました。

会場内は本当に熱気であふれ、ファッションの街ならではの勢いを肌で感じることができます。
人生初のランウェイ鑑賞もでき大満足!
今シーズン新作の服や靴などもたくさん販売されていましたが、いち学生には眩しすぎる光景でした…笑

 

…と、駆け足になってしまいましたが今月行われたイベントのほんの一部をご紹介しました。
9月はとにかく色々な催し物が盛り沢山で、こういうイベントに興味がある方へはイチオシの月です。
夏休み後で少し観光客も減るこの時期。来年は是非いらしてみてはいかがでしょうか?

第11回 テートモダン新館OPEN

こんにちは。8月初旬、無事ロンドンに戻って来ました。
1ヵ月留守にしている間にすっかり夏真っ盛り!

(と言っても30度には滅多に届きませんが…)
あちこちに短い夏を謳歌する人たちの姿があります。

夏のロンドンは本当に美しい。

 

さて、私はこれからの半年間ロンドン芸術大学の中のひとつ・チェルシーカレッジオブアーツという学校で空間デザインを勉強します。
コースが始まるのは9月のため、到着後は短期で照明デザインの授業を受けたり街を散策したり…
そして、6月にオープンしたテートモダン新館にようやく行って来ました!

テートモダンはとても有名かと思いますが、テムズ川南岸にある国立の近現代美術館です。
スイスの建築家ヘルツォーク&ド・ムーロンが元々の『バンクサイド発電所』を改築し、2000年にオープンしました。

*逆光ですが…テムズ川対岸より。

 

そして今年、同じ設計者のもと本館『ボイラーハウス』の南側に隣接する形で新館『スイッチハウス』が増築されました。
上の写真・右奥に見えている部分ですね。
本館の方は作品の収蔵スペースが年々足りなくなっていたようですが、新館の完成により約60%のスペース増とのこと。

上に向かってねじったような形と各階に設けられた横長の窓が特徴です。
最上階は展望台になっています。

 

外壁には所々に空間をとりながら、煉瓦がなんと33万6千個!!!
近づいてみるとなんとも再利用感のある煉瓦です…。

さて、新館内部へは本館のボイラーハウスから向かいました。
発電所だった頃はタービンホールだった場所が2つの建物をつなぐ場になっています。

*自然光がきれいに入ってくるホール。向かいが新館です。

 

*2館の案内図

 

新館スイッチハウスの0階(日本の1階)は本館に比べて発電所時代の面影をかなり残していました。
とにかく時代を経た重みがあります。コンクリート打ち放しの壁、配管類がむき出しの天井…
廃墟好きの方にはたまらないと思います。

*昔使っていたのであろう階段もそのまま残っています。

 

*在りし日の姿が…

 

こういう仕上がりって年配の方は好まないのでは?と思ったのですが、
おじいちゃんおばあちゃんのカップルも多く皆楽しそうに眺めていたのが印象的でした。
ロンドンは特にかもしれませんが、芸術や新しい試みに対するこの国の人達の姿勢がすごく好きだなぁと思います。

フロアを上がって行くと廃墟感は薄れ、天井の高い開放的な空間が続きます。
エレベーターが多数ある上に階段も幅広く、全体がゆるやかな螺旋状になっているので
のんびり作品を見て回るのにとても良い構造に感じました。

*床は幅の狭いオークのフローリング。

 

*奥へ向かって緩く勾配がついた床。休憩用のベンチも各所にあります。

 

外壁の煉瓦は内部からも窓越しに見えます。
隙間があるので通気もちゃんと取れ、光も少しずつ入ってくるんですね。

この時は閉館時間が近く建物を見るので精一杯になってしまいました。
次は展示を鑑賞しながらガイドツアーにも参加したいと思っています^^

ミュージアムショップも充実していて1日いても時間が足りないくらい楽しい場所なので、ロンドンに来る際はぜひ!